Jan 11, 2014

あなたは何重視?絵描きが目指すべき4つの能力原理



平日残業が続くお…。昨日も退社が24時前だお……。
それでも会社では自分以外の人がまだ働いてるお。。。

とはいえブログの週一更新は頑張ってみるよ。自主制作もするよ。
今日は最近のUSTでもよく話すテーマについてまとめてみたよ。
BGMは冒頭だけ『ツァラトゥストラはかく語りき』を流して読んでみてください。




__________日夜、制作や発表を繰り返す絵描き達。

彼らは何のために絵を描くのだろうか。

そこから生まれた絵は時と場所を選ばずに様々な空間で制作者も知り得ない人と共存している。

pixivで、Twitterで、アニメのエンドカードで、同人誌で、展覧会で、明治神宮の絵馬で、生協のお取り寄せカードで、クラブDJの後ろで、机の落書きで、あの子の肢体で、週刊誌のゴシップ記事で、プロパガンダの広告で、医学書で、メディチ家の礼拝堂で、ナスカ川で、ラスコーの洞窟で、、、

挙げていけばきりがないがそれの行動への原理はシンプルに大別することができるかもしれない。自分の経験や人との会話、作品からヒントを得て考えてみたら4つほどにまとめられた。これはオレが人の絵を見るときに一つの基準として考えている概念であり、絵描きと話すときにこれらを踏まえて会話するとお互いの価値基準を見つけやすいと思っている。特にイラストレーターへのインタビューを考えている編集さんらは参考になって頂ければ幸いである(キリッ。

タイトルにもあり、以降も度々登場する「能力原理」という言葉は造語である。「行動欲求を満たす能力を実行するための原理」という意味だ。日本語的にアレかもわからんけど妙にしっくりきたので使ってみた。厨二っぽくてかっこよくね?という無教養ッッッッ!!

あくまでもこれらは制作、発表している絵描き、もといイラストレーター、同人作家、ネット絵描きなどが対象である。つまり誰にも見せずに黙々と絵を描いている人(アウトサイダーアートなど)は以下には含まない。文中にいくつか例が出てくるが大概はフィクションなので実在の人物とは一切関係がございません。


Q:絵描きは何を目指して、何のために絵を描くのだろう?


1『画力』


この場合は「高いクォリティで作品を仕上げることが出来る能力」や「みんなから人気がとれるグラフィックを制作する能力」「正確に明快な図を描く能力」などを指す。分解していけばデッサン力や構成力、色感とも言える。要はかっこいい、可愛い絵、正確な絵を描くことを目指した能力原理だ。絵描きが絵描きである理由でもある。

これはわかりやすい。
大概の絵描きはこれを目指して制作している。それの証明としてちまたで売り出される対イラストレーター志望の商材がある。有名作家のメイキング本しかり、デッサン教室の案内しかり、専門学校のチラシしかり、すべて『画力』への渇望を焦がれる絵描きに対するものだ。高い『画力』を持つ絵描きは商業、同人、メディアに関わらず同業者からの憧れとなる。

『画力』はわかりやすく強いアピールができる分、盗まれやすい能力でもある。さらにアウトプットが必須で脳内で思い描いているだけでは上達しない。自分の精神や肉体を使い、絵として仕上げていかなければいけない。

これらはツールへの依存度が高く、鉛筆、筆、ペンタブ、Photoshop、SAIなどのデバイスがほぼ必須であり、感覚や知識を含めた労働や計算が大きく関わってくる。専門分野への学習も必要であり、一人っきりの時間で長時間格闘することによって習得出来る能力原理である。

2『露出』


いかに広いメディアで作品を発表するか、言い換えれば有名になりたい!という能力原理だ。名誉とも言えるかもしれない。例えば覇権アニメ()のメインキャラクターデザイナーだったり、戦国モノの老舗ゲームタイトルのパッケージイラスト、はたまた同人の超大手壁サークルなどであればその世界での『露出』能力が高いといえる。

「あの人、出世したな〜」とか「大御所の有名作家だ〜」みたいな部分もこの『露出』との結びつきが大きい。逆に言うと大御所感などというのは上記の『画力』や以下に挙げる『収益』『福祉』のような能力原理とは直接関係がないと思っている。絵が上手くない(ように見える)有名作家はいるし、そもそも門外漢からすると『画力』を計ることは難儀なことなのだ。描き手でもこの辺の価値基準はよくわからない場合がある。例えば現代美術の巨匠であるピカソの技術巧拙について感覚的ないし論理的に感動できる絵描きはそんなに多くないのではないか。

他作家に飲み会とかの場で会って、なんだか恐縮してしまうのも相手の『画力』への畏怖というよりもこの『露出』に関する基準からだと思う。もちろん『画力』に対する畏怖も多いだろう。しかし、感覚的な話になるが『画力』に対する畏怖はおそらく1年くらいで弱まる。見慣れるということが一番で、1年間高水準の作画技術を維持し、かつ初見を超える衝撃を出し続ける絵描きはほとんどいない。それに対して一度でも高水準の『露出』を獲得すれば例え本人の現状の『露出』や『画力』がイケてなかろうが、それなりに根強く響くものであると思う。ぶっちゃけて言えば『露出』は『画力』より人に認知されやすいのだ。

pixivではわずか10代ながら高い『画力』を持つ絵描きは多い。彼らにはまだ『露出』が足りないので、もしかしたら門外漢からはぞんざいに扱われることもあるかもしれない。しかしネットは『画力』を『露出』へかなり短いスパンで変換してくれる場所でもある。つまり現代においては比較的『露出』のステータスは上げやすくなっているといえる。

3『収益』


どれくらい儲かるか、高収入を得られる制作をしたいという能力原理。「お金」とも言い換え可能である。商業イラストでは多くの場合「原稿料」というシステムのもと『収益』を得る。同人作家もそれと同様に売り上げによって制作のスタンスが変わる場合はよくある。同人の例でいうとタイムリーな人気作品の二次創作やると比較的売り上げは良く、ニッチな創作ジャンルはかなり博打要素が強いと言える。(だからこそ創作は楽しいんだよな…^p^)。

資本主義の国家JAPANで生存戦略する以上は当然のことながら『収益』は大切である。よくある絵描きと企業とのトラブルも金銭的なことが多い。前回のエントリーで絵描きの『収益』に対するコントロール力を少し述べたが、これらの利潤を追求することは多くのイラストレーターにとっては死活問題と言えるかもしれない。

この能力原理は『画力』などに比べて、外からはあまり見えにくい。「この仕事はいくらで〜」とか「この同人は○○万儲かりました〜」のような情報は非常にプライベートかつ繊細なものであり、当然、常にブラインドがかかっている状態である。自分で価格を設定できる自主制作ならともかく、企業相手の受注案件であればそこそこ仕事をとってようやく相場がわかるので、デビューしたての新人絵描きはこの辺で悩むかもしれない。

受注額を増やすないし、同人誌の値段を上げるなどの処置は短期的にみて『収益』重視の戦略と言えるだろう。しかしここを上手くやらないと後述する『福祉』に悪影響を与えることとなる。

一方、日本においては『収益』を重視する原理が嫌われる傾向もあるように思う。儲けることや利潤を追求する人を嫌う「嫌儲(けんもう)」という言葉もあるくらいだ。たしかに自分には理解できないのにもてはやされているコンテンツに対して嫉妬を覚えることもあるだろう。「お金」は一番わかりやすく具体化された評価方法なので余計にそうなるのだろう。同様に他人の『露出』を妬むひねくれ者もいる。オレ自身もそういう傾向はある。みんなメジャーよりマイナー聴きなー、みたいな。そこに安心感が得られる。

そんな彼らに許容されるにはどうするか?
それが最後に言及する能力原理『福祉』である。

4『福祉』


一般に『福祉』と聞くと「介護」や「ボランティア」などを指す場合があるだろう。ここでいう『福祉』とは文字通りの意味で「しあわせ」「ゆたかさ」という訳になる(参照:Wikipedia)。貢献ともいえるかもしれない。ではそれらの向かう先はどこかというと公共ないし社会、さらに同業者もしくは自分のファンといえる。つまり絵描きが世のため人のためになるコンテンツを作りたいと願う能力原理である。ここでは区別するためにイラストにおける福祉活動を『イラスト福祉』として定義してみることにする。

『イラスト福祉』とはなんなのかというと絵描きが制作しうるコンテンツの中で『画力』や『露出』を使用しつつ、直接的に得られるものがユーザーの「しあわせ」「ゆたかさ」であるということである。わー宗教くさい!かっこよくマーケティング用語でいうとベネフィット(ベネフィットとは何か? | Web集客の急所)とも置き換えられるかもしれない。ここでの扱いはもう少し広義になるが。

例えばメディアやネットで広く人気がある絵描き、Zさんがいるとしよう。彼女が漫画/アニメ『進撃の巨人』の版権イラストを描いてpixivに投稿したとする。そのイラストとは作中に登場する人気キャラクター「リヴァイ」が躍動する見事な作品だった。彼女のイラストは普段の彼女のファンに加え、今まで彼女を知らなかったが『進撃の巨人』のファンであった多くのユーザーの心に刺さり、デイリーランキングで1位となった。『露出』が拡大されたわけだ。

それはさっきの能力原理でいくと『画力』に依存した事例じゃないの?という意見はあるだろう。ここからが重要なのだが『福祉』は必ずしも『画力』には依存しない。この場合はZさんが『進撃の巨人』のキャラクターを描くことが重要なのである。それが単なる男性が躍動している絵であれば評価は変わっただろう。もちろんイラスト単品の見栄えはあるがそれにプラスする要因でユーザーを喜ばせる事への原理こそが『イラスト福祉』なのである。つまり得られるベネフィットをざっくり挙げると「美しい/かっこいい作品(画力)」+「リヴァイ兵長萌え(ユーザーのしあわせ=福祉)」となるのである。その証拠にpixivのタグの一つに「あなたでしたか」というものがある。これは作家と作品が結びついたときに生まれるカタルシスの表現である。これは『画力』というよりも文脈に対してコミットしており、それを作家が意図的に行使することは『福祉』的な活動と言える。今風に言うと『あざとい』である。

もう一つの例を挙げると近年流行の「イラストメイキング」がある。それらは作家が自分の制作技術や過程をイラストや説明付きで公開しているもので、企業主催で有償のものもあればネットで作者によって無償で閲覧出来るものも数多く存在する。なぜ彼らは無償で自分の技術を公開するのだろうか?『画力』のアピール?『露出』の拡大?『収益』を狙うための自主企画の宣伝?いずれに繋がることはあり得るが、一つの大きな原理として制作ノウハウを共有したい、人に楽しんで貰いたいという『福祉』的な志向があるのだ。

また、別の例で同人作家Dさんのケースを見てみよう。彼はpixivでの得点は500〜1000点程度であり、同業者からもいわゆる「絵が上手いタイプ」としては注目されてない。つまり『画力』としてのステータスはそこまで高くないかもしれない(あくまでもpixivの点数=画力という評価は仮)。そして商業のイラスト仕事もほとんど経験がなく、普段は事務所移転の派遣スタッフとして仕事をしている。つまりイラストの『露出』や『収益』的なステータスもほとんどないだろう。そんな彼はあるときに自分の同人サークル『タイタンの幼女』を主催した。そこではイベント前に盛大な飲み会が企画され、多くの絵描きが集まり、交流を深めた。最初は20人程度のパーティが50人、100人となり次第に規模が大きくなり、より健全な交流のために運営方法なども変更された。その内に業界各社から編集者やプロデューサーなども訪れ、そこから生まれるビジネスや、作家同士の企画も増えていった。現在でも彼の『画力』『露出』『収益』のステータスは大きく向上しているとはいえないが周辺の絵描きに対しての『イラスト福祉』は大きいものと推測できる。少なくとも『タイタンの幼女』はその集団、業界では非常に大きな影響力があり、Dさんは彼らからは大きな感謝を持って迎えられるだろう。

つまり絵描きは『画力』『露出』『収益』以外の部分でも制作におけるベネフィットを獲得することはできるし、『福祉』が3つの能力原理に繋がる場合もある。人気の作家などは(内容が微妙だとしても)ネット投稿や同人誌をリリースすること、それ自体で『福祉力』が高いと言えると思う。他の例としてはweb漫画、動画配信、ブログ、お絵かき掲示板のコメント、オフ会、作者に会ったら「作品好きです」と伝えること、、、それら全てが『福祉』もとい人の信用や幸福に繋がる。特に現代における『イラスト福祉』は『露出』『収益』へつながりが深い。愛される人は有利なのだ。


まとめに入る。
あくまでも主観だが絵描きが商業化ないしメディアへ進出していくにあたっての能力原理は『画力』『露出』『収益』『福祉』の順でゆるっと変化するのだと思っている。もちろんすべての活動において一点集中ではなく行って戻って、また行って、同時に進めて、の繰り返しだろう。

単純化したモデルで言えばゲームグラフィックや展覧会などで良い絵を見て感動し、それと同じように描きたくて絵を練習する『画力』。続けてそれを多くの人に見て貰うために雑誌やネットへ投稿し、人気を得て知名度が上がる『露出』。そして一定の『画力』や『露出』への信用が上がってきたときに仕事が来るようになる。こなしていけば相場がわかり利潤を追求する『収益』。一方で自分と仲の良い絵描きやクライアント、ファンへのサービスを込めたコンテンツを提供する『福祉』へと繋がっていく。

「あなたは何重視?絵描きが目指すべき4つの能力原理」


そんな凄まじい釣りタイトルをつけてはいるが個別にイラストないしコンテンツを見てそれが何重視であるかを精査することは困難である。何度か述べているが絵に対する評価は主観依存が強く、上記の例で言っても『収益(=お金)』以外では得点化は不可能である。あくまでもこれらは概念としてとらえて頂きたい。能力原理を4つとしているが、最初の例で行くと「医学書」に登場する標本、挿絵などはふるい分けが若干難しいように思える。ここでのイラストは恐らく「説明として明快でわかりやすい図」として定義されるため、『画力』の項目に入れるのが望ましい。その「説明として明快でわかりやすい図」によって得られる知識は『福祉』となる。

いわゆる「有名絵師」と言われる人たちは上記の原理を高水準で獲得し、鍛え、守っているはずだ。とりわけ近年のネット文化へのコミットが強い作家は『福祉』的な原理に重きを置いているのがよくわかる。有名作家でもTwitterをやるし同人もやり、ファンサービスを厚くする。特に現代はSNSが発達し、有名クリエイターの作品クォリティ以外の部分がとても見えやすくなっているので気を遣うべきシーンでもある。自分のイラストがメディアに出たらそれを作家がTwitterで、場合によってはイラスト付きで宣伝することはもはや「お約束」と化している。そういったある種のノリの良さは多くのファンにとって好意的に受け取られるのである。

絵描きが追求する能力原理は人それぞれだ。細分化していけばキリがない。何かに行き詰まったら今自分が目指しているモノ、頑張るための行動原理は何なのかを考えてみるのも良いかもしれない。『画力』『露出』『収益』に目が行きがちの時は『福祉』などにも気を配ってみると新しい発見があるのではないだろうか。