Feb 1, 2014

同人百迷走 第4話「カイカイキキ入社!村上隆の仕事現場 後編」


前回「カイカイキキ入社!村上隆の仕事現場 前編
初回「おかえり僕のサブカルたち

カイカイキキでは日々、タスクが積もっていきます。
そんな仕事のさなか、上司から呼ばれこんな事を言われます。

「アートバブルが崩壊しました」




前回記事の冒頭にも書いたのですが
2008年の9月に起きたリーマンショックの影響が各所に波及しているようです。
これはもちろん就活やアート市場だけではありません。
一般書店はもちろん同人界隈でも売り上げは軒並み下がってきているようなのです。

正直な話、どこまでそれが社内での作業に影響していたかはわかりません。
それでもカイカイキキでの業務は日々、忙しいものとなっていきました。
スタッフ総出で制作に乗り出します。

オレも一時はは肉体的、精神的にも疲労し、帰宅後に救急車で運ばれたりもしました。
今までそんな環境にいなかったので様々な泣き言が出ます。

なんのために働いているかわからない。
昼休みも削られる。
どのチームもピリピリしている。

それでも周りのスタッフもとい、村上さんはオレの何倍も働いてます。
メチャクチャなスケジュールの中でも
夜遅くスタッフ全員に自ら差し入れをくれる日もあります。

絵画制作の面白さの一つは
作っているものがわかりやすく可視化されていることにあると思います。
描いて描いて描いていく内は、終わらない終わらない、、、という焦りが続きますが
進捗のチェックに全体のデータを出力などして俯瞰すると

「あぁ、やっぱり良い、オレ達頑張ったな」

そんな感慨がやっくるのです。


海外の企画展用の作品はできあがると現地から写真が送られてきます。
びっくりするような有名人がオフィスに遊びに来ることもあります。
携わった企画がレセプションパーティで披露され、
スタッフとして参加することもありました。

モチベーションは色々な場面で担保されていきます。

その後、オレは諸事情があり2009年の4月にカイカイキキを退社します。
最後は怒濤のような、まさに「兵どもが夢の跡」といった感じです。


KaiKai & KiKi Animation 2006


今回この企画でカイカイキキについて語るのにはだいぶ葛藤がありました。

辞めてから5年近く経つとはいえ"元スタッフの意見"としてこのブログの発言が見ている人に悪い影響が出てしまうのではないかと。
アーティストも会社もイメージが大事なので自分が変な事をいうとトラブルになる危険性があるからです。

それでも今回この事を語ったのはカイカイキキが一つの「仕事の共同体」であるということを伝えたかったからです。

オレのように時給で働くスタッフは一部の方々から「村上隆から搾取されている愚かな若者」と見られているかもしれません。

恐らく最先端のクリエイティブの現場というものはどこであっても過酷です。
アニメ制作などは有名ですが多くの若者が安月給で働いてます。
クォリティを優先すれば他の部分にしわ寄せが来るのは必然だと思います。

そこには大きな問題があります。
若い労働資源だからといって低い給料でこき使っても良いということはありません。
そういった現実に倫理的な肯定を促すつもりはありません。

そこは「楽しい「や「辛い」を超えた「侠の道」を行く人たちがいると思うのです。
永続的に安定のビジネスは存在しないでしょう。
プロであっても、プロであるからこそ不完全ながらの努力を繰り返すものです。

オレは当時はもちろん今もカイカイキキの
現場で働いているスタッフを何人か知ってます。

彼らに心よりのエールを送りたいのです。


このブログを読んでいる方の中にカイカイキキ、もしくはクリエイティブの現場に
興味を持って働きたいと考えている学生さんもいるかもしれません。
未熟ながら現在でも制作の現場で働く人間として一つお話をしてみます。


ここにこんなクイズがあります。

Q:法隆寺を作ったのは誰でしょう?



A:大工さん


これはオレが中学校の頃、修学旅行前に先生から言われたことです。

法隆寺を建立した人物が聖徳太子ということは現時点での歴史的な事実です。
しかし実際に現場で木を切ったり石を運んだのは大工さんでしょう。
それを皮肉っぽくしたものがこのクイズになります。

先生はそのあとにこう言いました。

「君たちは大工さんの仕事を見てきなさい」


制作の仕事は「大工さんになること」だとオレは思ってます。

ディレクターやアーティストの指示の元で職人的な技巧を駆使し頭で考え、最適な手段で制作します。
そういった職人の労働に支えられて一つの作品は組み上がっているのです。
逆に言えばそういった職人がいなければ作品はできません。

はたからは理不尽に見える制作現場でも
その組織がある程度継続し、完成度の高い製品を出し続けているなら
代表は職人への賛美を忘れてはいないでしょう。

少なくともカイカイキキはそれができている組織だとオレは思っています。


さて

長くなりましたが同人制作以前の話はこんな感じです。
個人的な仕事観から書いた方が説明しやすいと思ったのですがさてさて。

次回からは本題、同人に関することを書きます!


次回「同人イベント初参加で1000部を発行!!実売数はわずか50部」へ続く


<連載目次>