前回「在庫800部を抱えつつ次回作を企画、発行部数はもちろん…」
初回「おかえり僕のサブカルたち」
自分のサークル語りが長くてアレですが、、
そろそろコラムっぽくなってきます。
1月末になりイラスト本「戦」のリリース直前となります。
サイトやpixivなどでの告知を開始し、そわそわする日が続きます。
そんな中、とある動画がニコニコ動画に投稿されました。
Tweet
「初音家の食卓」が三冠を獲得
こちらのイラストに見覚えのある方はいるでしょうか?
shirakaba作の「初音家の食卓」というイラストです。
こちらの制作過程を「描いてみた」カテゴリとしてニコニコ動画に投稿したのです。
圧倒的描き込みもさることながらコンセプトが見事に刺さりヒット作になります。
pixiv公開後はデイリー、ウィークリー、マンスリーすべてで1位を獲得します。
当時は「三冠達成!」とか喜んでました。
百化の企画とは全く関係のない絵ですが、
ありがたいことにこのイラスト内のコメントで「戦」を宣伝して頂いてます。
そのおかげで当時はpixivから毎日1000以上のPVが百化のサイトに流れました。
オレとしては完全に想定外でしたがとても嬉しいサプライズでした。
そして当日
2010年2月14日、コミティア91の当日になりました。
百化の売り子も6人まで増え、所帯じみてきました。
いつもよりもスペースを少し凝ったり、ポップを作ったりしました。
コミティアでも販促用に版権絵を飾っている人はいるので、
売らないならOKかな?と思い、shirakabaの「初音家の食卓」を飾ったりしました。
まともな画像がみつからず…
恐らくこの時が初めてかと思うのですが、
同人委託書店のCOMIC ZINや恵文社の担当の方が来くれました。
「本をうちの店に置かせてもらえないか?」
というお話があり、初めて委託をお願いする事となります。
そしてイベント開始。
隣のスペースが「ドロリッチ擬人化本」だったことをよく覚えてます。
まぁコンセプトとメンバーからしてすげー売れるんだろうなー、
とか思ってましたが、予想通りすげえ売れてました。
オレも買いましたし。
うちのスペースはというと、、、11時の開始直後はちらほら、でした。。
しかし30分もすると3メートルほどの行列ができました。
その列がなかなか途絶えない…!
結果14時くらいまで行列を維持し続けました。
かつてないほどの回転数で忙しかったです。
結果として「戦」は300部、「祭」は100部、
他既刊誌は各20〜50部程度売れました。
全企画の黒字化
コミティア91では40万円以上の売り上げが出ます。
労力に対しては微々たるものですが、
前回から考えるとこれは本当に嬉しくて1年間耐えた甲斐があった!
と打ち上げ時はみんなで大喜びしてました。
もちろん「戦」に関して、300部程度の売り上げでは単一で赤字なのですが、
真価はその後の通販やイベントにありました。
まず、通販で「戦」が1ヶ月ほどで100部売れました。
同時買いにより「祭」も30部程度売れます。
以降も3ヶ月後のコミティア92、93、、と参加するのですがなかなかの成績です。
特に「戦」は既刊誌にも関わらず100〜200部程度の売り上げを作ってくれるので、
黒字化は比較的早い段階で達成しました。
イベント分は1年半ほどで完売達成してます。
「祭」もなんだかんだで50〜100部ほど売れるなど、
新企画が評価され、過去作品の売り上げが加速します。
2010年の冬くらいには「祭」の在庫も400部まで減り、黒字化します。
在庫がある状態の強さ
ここで一つ感じたのは在庫は重要な財産だという考え方です。
例えば初参加で「祭」の在庫が850部発生した時、
絶望してそれの大半を破棄してしまったなら数十万円単位の損失が出たでしょう。
過去記事:同人イベント初参加で1000部を発行!!実売数はわずか50部
2014年2月16日現在の「祭」の在庫は通販全て含め8部でした。
(書店に問い合わせてみました)
一つの人気商品をリリースすればそこに一定の信用が担保されます。
売れなかった過去作品は駄目商品とはならずに価値は復活します
むしろ在庫があればあるほど売れるので全体の利益は上がります。
事実、「祭」の在庫を定期的に販売できたのでうちのサークルは、
その後いくつかの無料企画を定期リリースすることに成功してます。
在庫は大量に抱えるとヒヤヒヤしますが、ないこともまた問題です。
基本的に商売において品物がなければ売り上げはありえません。
ダウンロード販売
在庫管理に関して少し話を広げるとダウンロード販売は非常にクレバーです。
アナログ本の場合は購買数を予想してコストをかけて印刷するのに対し、
デジタルだと当たり前ですがそこに対する配慮が一切不要だからです。
同人誌の場合のダウンロード販売は専門業者に委託するのがベターだと思います。
DLsiteやDMMなどが有名です。
多くは委託手数料がが5〜7割と非常に高いです。
現状で売り上げがある作品の大半はエロ系になってます。
日本はアナログ本に関する文化的な執着が強いのですが、
これからは創作・全年齢向けの電子書籍も売れていくと思います。
PCのダウンロード販売もそうですがiOS、Android市場は、
今後とも参入障壁はどんどん下がってくるでしょう。
専門技術を持たない同人作家でも販売が容易になっていくと思います。
ちなみに百化でも3年ほど前にiOSの画集アプリを作ってたりします。
↑クリックで詳細ページが開きます(その時点では購入されません)
スッカラカンの状態で同人を始めても2年くらい頑張れば色々できるようになります。
いや、自分自身の能力は相変わらずでも助けてくれる人が現れるのです。
強い組織を作る必然性
強い組織はトラブルへの柔軟な対応力を持ち、ハイクォリティな製品を生み出します。
それは組織を魅力的に見せ、多くの人を惹きつけます。
同人サークルは会社と個人の間の曖昧な組織です。
百化の場合も企画単位で人を集め、その都度解散と結成を繰り返してました。
オレ自身が企画からイラスト、デザインまでできるのですが、
活動を重ねるごとにタスク量も増えて無理が出ます。
人の出入りはある程度あって良いものの、
中核となる所を強くする必要があると感じました。
つまり自分と同じ仕事をできるスタッフ、分身のような存在を望むようになります。
ルーチンの作業を委任できればオレ自身はユニークな作業に挑めるからです。
その後、百化でもアシスタントを入れたり編集チームを立ち上げたりします。
大きな成果は残せませんでしたが、
コスト削減や企画の高度化に大きく貢献してくれました。
それまでコアだったスタッフが抜けても大きな問題も無く新作を出せるなど、
人材不足ながら采配はそれなりに上手くいったかと思います。
というわけで次回は同人サークルでの集団作業についてのアレコレを書いていきます。
次回「同人サークルの解散理由は『女』と『金』←これマジ?」
<連載目次>
第0話「おかえり僕のサブカルたち」
第1話「DESIGN FESTAで作品を売る……2年経っても赤字」
第2話「就職活動、HAL研究所の最終面接でやらかす」
第3話「カイカイキキ入社!村上隆の仕事現場 前編」
第4話「カイカイキキ入社!村上隆の仕事現場 後編」
第5話「同人イベント初参加で1000部を発行!!実売数はわずか50部」
第6話「これからは同人誌の時代、そう考えていた時期がオレにもありました」
第7話「同人誌の在庫は悪である」
第8話「在庫800部を抱えつつ次回作を企画、発行部数はもちろん…」